新年のご挨拶『争いや暴力をなくすために』

明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

 

令和5年の干支は癸卯(みずのとう)、「癸」は生命や物事が大きく成長を始め育まれていく兆し、また「卯」は温和、安らぎ、跳ねるという意味があるそうです。イソップ物語の『ウサギとカメ』のウサギのように油断せず、おごり高ぶらずに、跳躍しながらも一歩一歩着実に進むことが大切です。

 

さて、令和4年は、2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。(現在なお戦争状態にある)国内では7月に安倍元首相が銃撃、殺害されるというショッキングな事件が起こりました。これらの事象の共通点は暴力であります。いかなる理由があろうとも、武力行使、暴力は許されない蛮行であり強く非難します。

 

日蓮聖人は「法華経の修行の肝心(かんじん)は不軽品(ふきょうぼん)にて候なり」と仰っています。法華経の「不軽品」に登場する常不軽菩薩(じょうふきょうぼさつ)は、道行く人々に向かって、「私はあなたを敬い、決して軽んじません。なぜなら、あなた方は全て菩薩の道を歩み必ず仏になることができるからです」と述べられ、合掌礼拝を行いました。

たとえ杖で殴られ、石を投げつけられても、同じ態度で相手を敬いました。この尊い行いは但行礼拝(たんぎょうらいはい)と言われ、お釈迦様の前世のご修行の姿でもあります。

 

私達の心の中には仏様がいらっしゃると説くのが法華経の核心であり、常不軽菩薩の礼拝の実践こそが南無妙法蓮華経の心とされます。また合掌している際は、左右の手のひらを合わせることで、人に暴力を振るったり武器を手に持つことは出来ません。それは無抵抗の絶対平和の表れでもあります。即ち全ての人々が幸せになるよう願う心が合掌には込められているのです。

 

一人一人の尊い命に合掌礼拝することは、他者を敬い、平和を願う大きな力の源となり、争いや暴力をなくすことへと繋がるのです。

本年が良き安穏な年となりますようお祈り申し上げます。再拝

 

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いのちを支える〜自殺について考える〜研修会を終えて

昨日10月28日、日蓮宗大阪市社会教化事業協会主催で、3年振りの研修会が大阪市中央区社会福祉会館で開催、多くの方のご参加がありました。

YouTubeでのライブ配信もあり、当会幹事の私は司会の大役を担当させて頂きました。


講師にNPO法人 国際ビフレンダーズ大阪自殺防止センター理事長の北條達人先生をお迎えし、
〜いのちを支える〜「自殺について考える」というテーマで貴重な講義を賜りました。

 

厚生労働省の発表によると、2021年の自殺者数は、2万1007人、昨年の交通事故の死者数、2636人と比較してもいかに多い人数であるかが分かります。


特にコロナ禍において、20代、30代の若い女性が増加傾向にあり、また小中高校生の自殺も増えているのが現状であります。
新型コロナ流行の初期よりも、時が経ち具体的な悩みが明らかになる今日この頃、経済が回り出し、少しずつ生活を取り戻す人が増える中で、1人だけ取り残される不安から追い詰められる傾向にあるそうです。

 

複数の問題を抱えながらも悩みを周囲に打ち明けられない方が多く、自殺のサインは至って気付きにくい。メンタルの強い弱いは関係ないそうです。


また自ら「死にたい」と口にする人は、自殺しないと決めつけるのではなく、死にたいと口にしながら耐えていると考えなければなりません。
自分の価値観だけで決め付けるのではなく、その人と向き合うことが求められます。

 

依然自殺者への偏見がある世の中、誰にも話せず抱えこんでしまい、大きな喪失感を抱えるご遺族が多い現状も考えなければなりません。


「ビフレンダーズ」の名前の由来は『Be Friend』
悩んでいる人の気持ちを受け止め、心的にそばにいられるか、『話せてよかった』と言われることが願いであり、専門家でなくても出来る活動を大切にしておられます。

降り続く雨… 雨を晴れに変える活動ではない。「止まない雨はない」と伝えるのでもない。

心に悲しみの雨が降り続いている方に傘をさしてあげるのが、寄り添う活動であります。

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3年振りに訪れた東北被災地 最終日

7月27日(水)

いきなり問題から入ります。
東北第一の都市は仙台市であることは誰もがご存知でしょう。では東北第二の都市はどこでしょう?

私は東北新幹線の停車駅でもある郡山市かなと思っていましたが、答えはいわき市です。


前日にそのいわき市へ移動、そこで横浜から来た同級生住職と合流し、最終日は一緒に観光、その前に今回の目的であったいわき震災伝承みらい館と東日本大震災慰霊碑を訪れました。


震災伝承みらい館は、地震津波に加え原発事故が重なる未曾有の複合災害に見舞われたいわき市の震災の記憶や教訓を風化させず、後の世に伝えていくために建てられた施設であります。

掲げられている「知る」「見る」「触れる」ことは、震災の教訓を未来につなぐ為に欠かせない大切なことです。

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会場には、卒業式の当日に津波被害を受けた中学校のピアノが展示されていました。海水を被り再起不能と思われましたが、調律師方々の尽力により塩害から復活した「奇跡のピアノ」として、演奏会などでも度々奏でられ、癒しと勇気を与えて続けています。

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その後、慰霊碑前で読経供養を行いました。慰霊碑のある豊間地区は巨大地震によって高さ8.5mの津波に襲われ、壊滅的な被害を受けました。家屋が流され多くの方々が亡くなりました。津波いわき市だけで300名近くも亡くならたことを知りました。合掌…

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観光は塩屋埼灯台マリンタワーに上りました。青い空と何とも美しいいわきの大海原、その光景に思わず見惚れてしまいました。

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最後に約800種類もの生物が展示されている水族館「アクアマリン福島」に行きました。潮目がテーマの体験型水族館でもあり、多くの子供たちの笑顔がありました。
当施設は大震災の津波の被害をまともに受け、電気系統の停止により、当時展示されていた9割もの生物が徐々に死滅していったそうです。

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いわき市は海の幸は勿論のこと、ラーメンやスイーツも美味しく、またいつの日か行きたい地となりました。 おわり

 

3年振りに訪れた東北被災地 2日目

7月26日 火曜日

2日目はまず気仙沼の震災遺構、伝承館を見学しました。気仙沼向洋高校の跡地に建てられた当施設は、将来にわたり震災の記憶と教訓を伝え、警鐘を鳴らし続ける「目に見える証」として活用し、気仙沼市が目指す「津波死ゼロのまちづくり」に寄与することを目的とされている震災遺構であります。

 

気仙沼東日本大震災関連のことが分かる施設は、学芸員が中心になり調査された震災被害記録等が展示されているリアスアーク美術館と伝承館の二カ所です。

 

2011年3月11日、普段通り学校生活が営まれていた気仙沼向洋高校の校舎は大津波に襲われました。

流されて来た車が教室に…

更には冷凍工場が4階のベランダに激突しました。正面衝突こそ免れたものの、まともにぶつかっていたら果たしてどうなっていたでしょう?

 

当日校内には170名程の生徒さんがいたそうですが、別の高台にある中学校に避難したり、屋上に避難したりして、奇跡的に全員無事でした。

 

当時の生徒さんの思い、先生の思いを想像しながら、ゆっくり見学し学ばせて頂きました。

震災を知らない多くの方に教訓を後世に伝え、尊い命を守る防災が大切であります。

 

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その後、南三陸町さんさん商店街に立ち寄り、仙台方面へ移動、仙台駅でレンタカーを返却しました。

仙台駅からは常磐線特急ひたちで福島県いわき市へ向かいました。常盤線は震災と原発の影響をもろに受けました。

 

原発の影響により不通になっていた(帰還困難区域であった)浪江駅から富岡駅間が一昨年の3月14日に開通し、震災から実に9年の歳月を要し漸く全線開通となりました。

 

数年前に読んだ作家の彩瀬まる著『暗い夜、星を数えて』〜3.11被災鉄道からの脱出〜という本をふと思い出しました。

彩瀬さんが、たまたま東北旅行中だった3月11日、仙台からいわきに移動されている時に大震災に遭遇したのが常磐線の列車の中でした。

筆者の被災体験と、恐怖と孤独の中で、助け合い手を取り合った方々との絆が綴られている渾身のルポルタージュであります。

 

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東日本大震災は被災三県の沿岸部を中心に広範囲にわたる地域で多くの方々が被災されました。人々の生きた証、人々の思い、人々の繋がりが数々の教訓となり現在、そして未来へと遺されていくのです。

 

3年振りに訪れた東北被災地 初日

 7月25日 月曜日

 

東日本大震災の後、ほぼ毎年訪れていた東北被災地、コロナの影響で3年振りの訪問となりました。
下火になってきた頃に計画を立てたものの、いざ出発前になって感染急拡大、キャンセルも考えましたが、次いつになるか分からないので決行しました。


特に今回は震災以降にお世話になった気仙沼の活動家、伊藤佑一郎さんが令和2年に急逝され、葬儀も参列出来ず、ずっとお参りしたい思いがありました。やっと彼が眠る気仙沼のお寺にある供養塔にお参り、仲間とも再開し読経供養が叶いました。

 

その後、隣の市岩手県陸前高田市へ移動、夜は鶴亀鮨さんへ、久々に店主の阿部大将と再会しました。

津波で自宅兼店舗が流され、仮設店舗からついに本店舗が4年前にオープンしました。仮設の時から行かせてもらっていましたが、本店舗には2回目でした。

 

3年前に比べて新しい店舗も並び、その街並みから復興は遂げられたかのように見えますが、人はまばらで特に「夜になると皆家に帰るので寂しくなるね」と大将。

 

宿泊は陸前高田キャピタルホテル1000、震災前は海沿いにあった当ホテルは大津波で全壊、高台に見事に再建されました。仙台空港から気仙沼陸前高田と移動距離はありましたが充実した1日となりました。続く

 

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献花…

月に1、2回奈良市内に月参りに行っています。
今日は帰りに(今回の事件の)前々から決まっていた所用が西大寺であり、悲劇の現場を訪れ、献花、祈り捧げました。

 

周辺は渋滞、空きのない駐車場…
途切れることのない献花の列…
周辺には物々しい警備の警察官、報道陣の数…

事件当日もこの警備体制を整えていればなと思います。


安倍元総理への支持不支持、政治信条それぞれあって当然で、私も個人的には納得いかないこと多く…

でも政策と人の心はまた別なのだと思います。

不条理過ぎる死、志し半ばでの非業の死を遂げた元リーダーに対する日本人の悼む気持ちの表れなのだろうと思います。

 

安倍元総理が銃撃された場所のすぐ隣に商業施設ビルがあります。銃撃の瞬間、そのビル内で仕事をされていた人に聞くと、「大きな発砲音が聞こえてビックリしました。まさがここでこんな事件が起こるとは…」と仰っていました。

 

(私もよく使っている)90メートル先にある立体駐車場の壁面に弾痕が見つかりましたが、普段から人通り多い通りでよく他に死傷者が出なかったなと思います。

 

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安倍元総理への銃撃殺人事件に思う

昨日、安倍元総理が街頭演説中に銃撃され亡くなりました。日本で、このような銃撃事件が、それも古都奈良で起こることを誰が一体想像したでしょうか?


言論、民主主義に対しての破壊行為であり、このようなテロ、暗殺とも言える暴力は許されないし、それも背後からの銃撃は卑劣極まりないです。

 

政治信条、思想もそれぞれ違いがあって当然、また宗教、信教も多様であります。
私たちは選挙、投票や言論(誹謗や暴言なく)決められたルールの中で戦わせ、伝えることしかありません。

 

安倍長期政権、政治活動で幾多の功績がテレビ報道などで取り上げられていますが、未だ未解決な様々な問題もあり、支持不支持は当然あるでしょう。
しかしながら、命懸けで最期まで精力的に活動された姿に敬意を払うと共に、ご冥福を心よりお祈りします。


日本では発砲事件は世界に比べて極めて少なく、警視庁の統計によると、昨年日本で起きた銃器発砲事件は10件、負傷者5人、死者1人でした。
10件中、暴力団が関与しない発砲事件はわずか2件というデータが出ています。

 

警備体制の問題も指摘されていますが、銃撃も想定した上で、2度とこのような事件を起こしてはなりません。

 

気になったのは事故の瞬間などの衝撃的な映像が繰り返しテレビ等で流されていますが、PTSDの症状を起こす人が一定数あろうかと心配されるところです。誰もが容易にスマホ撮影、SNS投稿可能な世の中で、衝撃事件の伝え方はどうあるべきなのかも考えさせらました。

 

平和で安穏な世の中を心よりお祈りします。合掌