大阪医療刑務所と大阪少年鑑別所を見学

先日、大阪市日蓮宗社教会主催の野外研修会で、堺市にある大阪医療刑務所を見学した。教師(僧侶)ばかり15名の参加であった。

始めに制服姿の刑務官による医療刑務所の現状や問題、施設の紹介などプロジェクターを使って丁寧な説明があった。
医療刑務所とは、入院や専門的な治療を必要とする受刑者が収容される医療専門施設である。ここに収容されるということは、病気のため一般の刑務所での服役に耐えられないということである。内科、外科始め、精神科や泌尿器科、眼科といった様々な疾患に応じて対応できるようになっている。
また、医療施設であると同時に矯正施設でもあるので、普通の作業を行う受刑者も収容されている。
当所では女子病棟もあり女性受刑者もいるが、男女の接触がないようにしているそうだ。

最近の高齢化社会に伴い、高齢者の収容比率も上がっているという。
医療刑務所は全国には大阪の他に、東京の八王子、北九州、愛知の岡崎と四カ所しかなく、受刑者は病状によって遠くに搬送されたりするとのこと。

説明の後は、実際施設内を見学させてもらった。普通の総合病院のように医師がいて看護師がいて、検査室や処置室、手術室もある。加えて人工透析やCTスキャナーといった医療機器まで揃っている。刑務所や矯正施設であると考えると驚くが、医療施設と考えると普通なのかも知れない。
食事は病状に応じて味付けや中身が違う。数種類の食事のサンプルを見せてもらったが、栄養のバランスを考えた結構良いものであった。

受刑者の衣食住を含めた医療費は全て国からの税金。入所する前には病気であるにもかかわらず、医療を受けていない受刑者も多く、ガンなどの病気が大分進行した状態で発見されたりもするそうだ。寧ろ娑婆にいるよりも、健康状態が良くなり長く生きられるのかも知れない。国民感情を考慮したら複雑な実情である。
要するに、受刑者に国の法律で定められた刑を執行するという目的の中で、病人には適切な治療が必要ということであるとお聞きした。

もちろん、医療刑務所で亡くなる受刑者も年間70名くらいいて、今朝も1人死亡したと述べておられた。依頼があれば資格を持った僧侶がそこで葬儀をしたりする。

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続いて近隣にある大阪少年鑑別所を見学した。そこは、家庭裁判所から送られた少年を収容し、心身の状態を科学的方法によって調べ、審判が下され後の処遇が決まる施設である。
壁に囲まれた施設には、図書館や運動場もありそれなりに充実していた。そこは男子ばかりではなく、女子も収容されており、その日も1人の女子が面接を受けていた。

それらの施設は社会から切り離された世界…。例えが相応しくないかも知れないが、村上春樹さんの小説に現れるような壁の中にある世界なのである。