イチロー選手の引退 〜空の実践者?〜

甲子園では平成最後の選抜高校野球が行われている。平成3年の第63回大会に先日引退したイチローが、愛工大名電高校の3番ピッチャーとして出場、一回戦で優勝した松商学園と対戦した。

 

松商学園には日ハムにドラフト1位指名されることになる注目の上田投手がいて、その試合でイチローは5打数無安打に抑え込まれた。他には阪神にドラフト1位で指名される大阪桐蔭の荻原選手もいた。

 

28年前、甲子園での華やかな舞台での戦いを観ていた人の中で、将来プロ野球メジャーリーグでのイチローの勇姿を誰が想像したであろうか?

 

イチローオリックスで7年連続首位打者、当時の安打数日本記録など、日本最強の安打製造機、最強打者として海を渡った。

 

日本人野手がメジャーで活躍できるのかと懐疑的な見方もあった中で、1年目からの首位打者最多安打、新人王などを獲得、その後10年連続200安打達成やメジャーシーズン最多安打記録、メジャー3000本安打など世界が認めるスーパースターとなった。日米通算で4367本は、世界記録としてギネス記録認定された。

 

東京ドームでのマリナーズ対アスレチック戦が現役最後の試合となった。感動的なシーンの後、深夜の引退会見はイチローらしく、一言一言に説得力があった。

「人より頑張ることなんて、とてもできない」「あくまでも、秤は自分の中にある」

人と比較するから自分の心が揺れ動き、様々な煩悩が生じるのだと思う。先ずは自分を見つめること。そこにイチローが会見で述べた「野球は団体競技であるが個人競技でもある」との発言が噛み合う。

 

先日亡くなった哲学者の梅原猛先生の平成14年に発行された著書の中で、イチローについて述べてる内容がある。それは『イチローは「空」を実践している』と小見出しから始まる。

イチローは球場に行く時、必ず1人で行くが、それは雑談によって心が迷ったらダメだからで、集中して心を空の状態にするからだ」と。

「試合でどんな球が来ても打てるように心のこだわりを捨てる。即ち空の知恵を実践している」と述べている。(朝日新聞社 梅原猛著『梅原猛の授業 仏教』参照)

 

本書はイチローがメジャー入団1、2年目の頃に書かれたのだが、買った当初は読んでも深みを知ることが出来なかったが、今でこそ良く分かる気がする。

梅原猛先生も凄いが、イチローは心身共に超一流だったとしか言いようがない。