石井光太著『遺体 : 震災、津波の果てに』を読んで
東日本大震災からちょうど2年後に『遺体 : 明日への十日間』という映画を観たが、原作は初めて読んだ。
舞台は岩手県釜石市。遺体安置所の関係者など多くの証言から筆者の視点で構成された渾身のルポルタージュは、震災発生から約3週間の壮絶な惨状が描かれている。
因みに拙僧は、震災から一年後に有志として釜石市を訪れ、日蓮宗仙寿院様での多くのご遺族参列の元、一周忌法要に出仕させて頂いただけに、感慨深く涙が溢れ出た。
6年前、津波によって破壊されたあの現場で、次々に増えていくご遺体を目の前にして、それぞれの持ち場で役割を担い全うされていた方々がいた。駆けずり回った自衛隊、海上保安官、消防団員、医師、歯科医、歯科助手、葬儀社、市職員、民生委員、僧侶といった方々の尽力があったことを忘れてはいけない。
そんな中で、ご遺体をご家族の元へお返ししたい、供養をしてあげたい、何とかしてあげたいという気持ちが本書から伝わる。特に優しく向き合っておられた民政委員で元葬儀社社員の千葉さん(映画では西田敏行が演じる)と仙寿院住職の芝崎さんのお二人が印象に残る。
最後に生きたいと願いながらも亡くなっていた方々、必死で救おうとしたが叶わなかった命があったことを何年たっても忘れてはならないと改めて思う。
原作も映画 もどちらも心打たれる作品になっている。
映画↘️