夢は叶うプロジェクト主催 東北ツアー 〜2日目前半〜

やはり音楽は人に感動や勇気を与えることが出来ると思う。歌詞に込められた想い、奏でられる音と歌声が心に響き伝わる。

ミュージシャンの被災地支援活動は、勿論遠く離れていても出来るが、実際被災地に行ってライブをすることに大きな意味があるのだと思う。
それは我々僧侶にとっても同じことが言え、自坊の本堂での日々のお勤めの中で、無辜の御霊に供養し祈ることも勿論大切だが、実際被災地へ行って慰霊供養を捧げることに大きな意味がある。

今ツアーは代表がシンガーソングライターの灯織さんということで、繋がりのある多くのミュージシャンや音楽仲間も一同に被災地に集った。

初日のホテル観洋では、同部屋になった私以外の5人全員がミュージシャンだった。
「僕1人だけが音楽家と違いますね」と言ったら、1人のミュージシャンがこう仰った。
「英宗さんも、十分音楽家ですよ。木魚で音を出しながら声も出される」
印象深い言葉であった。音を奏でる仏教音楽がミュージシャンたちが心を込めて演奏することと似通っている要素があることを改めて感じた。

2日目は台風18号が本州を直撃、ちょうど我々が滞在していた南三陸町にも接近していた。
大阪から合流する予定だったシンガーの泉たくとさんと、もうお1人のシンガーも交通機関の事情で来れなくなってしまった。ツアーに組み込まれていた予定も大幅な変更をするしかなかった。

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「平成の森仮設」は町が運営している複合型のスポーツ施設で、今ではサッカー場があった場所に最大級の仮設住宅が建てられ、所狭しと建ち並んでいる。
多くの人が過ごされていた平成の森避難所から仮設住宅に移られて3年以上の月日が経つ。不自由な生活を多くの人が余儀無くされているのだと実感した。

暴風雨が激しさを増す中で、自治会長さんのお話があった。
震災当日、決死の思いで高台にある平成の森に避難され、大津波が何度も襲い町が流されていく様子を目にされた。

避難されている方は、孤立状態の中でおにぎりを作ったり、暖を取ったりしながら飢えと寒さに耐えた。グラウンドに作ったSOSのサイン…。何と上空から救助に降り立ったのは米軍の戦闘機だった。助け合うトモダチ作戦とはこのことだ。あの時皆が助け合い生きようされていたのだ。

その後、自治会長さんに手配してもらったお弁当を各担当ボランティアチームで分かれて頂いた。
午後から来られた方に対し、コンサート、マッサージ、余興など楽しんでもらう予定だったが、この天候では…。
こういう時は主催者の判断が難しいところ。危険性を鑑み、思い切って中止にする決断も必要だ。
夜に気仙沼で予定しているライブのこともあったので、電話で現地の状況も聞きながら、今後の行程に関し灯織さんと相談。予定を大幅に変更して早くに気仙沼入りしてホテル待機ということになった。

防災無線からは台風接近に伴い警戒が呼びかけれた。緊張感が走る。

自治会長さんの講話の中で、正常性バイアスの話があった。正常性バイアスとは、災害等が起こっても、それを正常の範囲内としてとらえ、心を平静に保とうとする働きのことである。この働きが起こったことで、3.11の時も避難が遅れたり、しなかった人が犠牲となったというお話だった。

暴風雨の中、気仙沼市へとバスは向かった。

つづく

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